GitHubを使った原稿整理

「『京都の災害をめぐる』余話」は、
企画制作の裏話や、本には書ききれなかった補足事項など、本書をより楽しんでいただくための文章を著者に寄稿していただく企画です。

 

今回は、小さ子社より、編集作業の裏話です。
本書は、複数の著者による共著であり、かつ一般書ということもあり、各執筆者の原稿には統一感が求められます。
そういった内容面に加えて進行管理の面でも、関係者の情報共有に大いに役だったのが、GitHubでした。
GitHubを使った日本語書籍原稿作成の一例をご紹介します。

GitHubとは

GitHubの「Git」(ギット)とは、大勢で分担してコンピューターのプログラムを効率よく開発するために考えられた、プログラム開発の仕組みのことです。
GitHub(ギットハブ)は、Gitを利用できるサービス(プラットフォーム)の一つです。
有料版もありますが、制限内なら無料で使うことができます。
一見、書籍原稿の作成には関係ないように思えますが、コンピューターのプログラムというのは、人間とコンピューターが共通に理解できる言語であり、文字によってあらわされるということを考えれば、書籍もコンピュータープログラムも中味は同じです。
共同作業に強みを発揮するGitは、本書の制作にも大いに役立ちました。

GitHubによる原稿整理の実際

(1)リポジトリの作成・ユーザーの招待

GitHubでファイルを置く場所をリポジトリといいます。まずはGitHubにアカウントを作成し、本書専用のリポジトリを作りました(このころは書名も決まっていなかったので、リポジトリの名前も適当です)。
リポジトリは、公開範囲を選べます。今回は、共同編集者だけに公開するプライベートリポジトリにします。
GitHubでは無料アカウントでも、非公開のプライベートリポジトリを作ることができます。ただし無料アカウントの場合は、共同編集者は3人までです(2019年5月の制作当時)。
管理者(小さ子社)から、執筆者に招待メールを出し、本書のリポジトリに参加してもらいます。

(2)入稿

まず、できた原稿を、地点ごとにどんどんGitHubに入れていってもらいます。
今回は、ひとつひとつの原稿が短くて、それが多数集まるというイメージなので、GitHubとの相性もよかったと思います。
締切までにどこまでできているのか、どんな感じの原稿が入っているのか、リアルタイムで共有することができます。
なお、執筆要項については、事前に打ち合わせをして決めています。執筆要項はGitHubのreadme(トップページに内容が掲示されるファイル)に念のために入れています。
掲載地点もまずは大まかに決めて、それらはGoogleスプレッドシートで共有しました。

(3)ブラッシュアップ

次に編者間で原稿に手を入れてもらったり、編集部による原稿整理(ルビ追加、あきらかな誤字・衍字・脱字の訂正、表記の統一、参考文献表記統一など)をしました。GitHub上の原稿を直接書き換えました。
GitHubのすごいところは、誰が、いつ、どこをどう変えたか、履歴が全て残るということです。
こちらで変更したものを、執筆者にも随時チェックしてもらい再訂正するなど、細かい調整を効率的に行うことができました。

Gitには、もっと大きなプロジェクトを多人数で行うための、便利な仕組みが用意されているのですが、今回は、ものすごく単純なGitの使い方をしています(というか使いこなせない)。ある意味、単なるクラウドにファイルを置いているのと同じような使い方なのですが、それでもこの履歴管理は大きな魅力です。
編集部では、ブラウザからGitHubにアクセスして、Web上でマスターをそのまま書き換えていました。
著者は、ローカルのGitからマスターにコミットするというような使い方をされていたと思います。

(4)あとはInDesign

整理した原稿を、編集部のローカルのGitにクローン(ダウンロード)し、テキストファイルをいろいろ処理して、組版のソフトであるAdobe Indesign(インデザイン)に流し込みました。
以後は通常の書籍制作のフローに沿って、InDesignの組版データをオリジナルとして、ペーパーによる校正を進めました。
図版については、別途Googleドライブで共有して管理しました。

今回は、InDesignに流し込んだ時点で、GitHub原稿は触らないというようにしました。
原稿ができてからも、まだまだレイアウトや分量の調整、図版との兼ね合いなど、本というパッケージを作り上げるための作業があり、それにはやはりInDesignに頼った校正のフローが一番安心・安全・効率的だからです。

逆に言えば、書籍でも完全な定型のものや、Webコンテンツなど、形や分量の制限があまりないようなリフロータイプのものなどは、原稿作成・校正までGitHubだけで突っ走れるかもしれません。原稿整理の自動化なども含めて、GitHubには非常に可能性を感じます。
下記の記事がすごく参考になりました。

 

(5)初校後の情報共有・議論にも


それ以外に役だったのが、GitHubのissueという機能です。
これは、要は掲示板です。
ほかのSNSなどでも同じような機能は代替できるでしょうが、GitHubに付いていて使いやすいので、重宝しました。
初校が戻って再校を出すにあたっての疑問点はissueで投げかけ、議論して結論を出して再校に反映させる、というような流れです。
著者一人なら1対1のツールでよいのですが、複数著者の場合は便利です。
「余話」の第1回で加納靖之さんが書かれた稲葉神社の問題のような議論も、ここで行っていきました。

稲葉神社に伝わる日記と寛文近江・若狭地震

GitHubは人文系の書籍づくりにとっても非常に便利なツールです。編集者・著者の方は大いに活用されることをオススメします。

『京都の災害をめぐる』特設ページ